| クシャミと私 |
渡邉 裕
| 略 歴: |
昭和26年 東京大学医学部卒
昭和27年 東京大学医学部 第2外科入局
現在、
白根徳洲会病院 東洋医学科部長
全日本鍼灸学会監事
ブエノスアイレス麻酔学会疼痛財団顧問
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| 著 書: |
「ハリを知らなくてもできるツボ注射治療」金芳堂
「医家のための分かりやすい鍼治療」金芳堂 |
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昔、漱石の「猫」を読んだ時、自分が苦沙彌先生になろうなどとは夢にも思わなかった。
意識し始めたのは外科医になってからだと思う。手術中にクシャミが出ては困るので対策を考えた。息をつめてクシャミを流産させる。一寸耳に響くが、できないことではない。何時となく癖になって、これが30年位続いた。
手術に縁が少なくなって、我慢するのを止めた。何時でも何処でも遠慮なく大声(?)でクシャミをして見ると、気が楽になるのと共に、随分頻繁に出ていたことにも気付いた。私の場合は季節に関係なく、ハウスダストによるもののようである。何時の間にかトレードマークになっていたらしく、外出から帰ったことがすぐに判ってナース達がサッと緊張したという話も聞いた。東京の子供の家に行った時、玄関前に立つと同時に、呼鈴を押さないのにドアが開いた。タイミングの良さに驚いたら「クシャミしたでしょう」といわれたこともあった。たまにクシャミが少ない日があると、ナース達から「どこか具合が悪いですか?」と気遣われたりもした。「ハクション大魔王」という綽名を奉られていたことも後で知った。
このクシャミには小青竜湯が良く効いた。花粉症には鍼治療の効果が絶大である。併し自分がクシャミをしながら「花粉症など鍼と漢方で簡単に治りますよ」などと言っているのでは迫力に欠けること夥しく、何ともサマにならない。お世辞にも良い味とは言えない小青竜湯が、一年中手放せない私のお守りとなっていた。
3年程前、同期の横浜市大、名誉教授のご縁で、癌の免疫療法を目的とする免疫増強剤※「アクチノン」の存在を知った。国立がんセンター研究所化学療法部の研究から出来上がった食用茸の抽出物で、しっかりしたエビデンスもある。後に開発された先生に直接お会いする機会にも恵まれた。お話を聞いているうちに、免疫増強だけでなく、免疫調節の効果もあるのではないかという感じがして来た。そこで先ず自分で使ってみることとした。用量は1日2錠、朝夕服用を続けた。
1、2ヵ月の中に小青竜湯を余り使わなくなっていることに気付いた。クシャミの出かたも確かに減っている。以来2年余り服用を続け、たまには小青竜湯のお世話になることもあるものの、クシャミとは随分縁遠くなった。これに力を得て、腰痛の序に喘息も鍼で治療していた患者さんにアクチノンの試用を勧めた所、暫くして大分楽になって来たと喜ばれた。アクチノンは確かに免疫調節にも有効であるらしい。
そんなことを言いながらアクチノンをつまんでいると、「噂して貰えなくなっただけでしょ」とうちの山の神様が日うた。知らぬは女房ばかり也、である。
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※本文中に使用されている「アクチノン」はエノキ・ブナシメジ抽出物EEMの商品名です。
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