統合医学とは
池川哲郎
 戦後から今日までの医学の進歩は、誠に目を見張るものがあり、それによって人々は語り尽くせないほどの恩恵を受けてきました。しかし癌で亡くなる人の数は増え続けており、さらに心臓病や脳疾患また糖尿病やアレルギーなど、いわゆる生活習慣病に対して進歩した近代医学でも克服することができないのが現状であります。一方わが国では近年子供が少なくなって年寄りが増えるいわゆる「少子高齢化社会」を迎えて、保険、福祉、医療などの面ではいろいろ問題が出てきております。このままだと、孫の時代になると、一人の子供が数人のお年寄りの面倒を見なくてはならないような計算になってしまいます。
これらの問題を解決して行くためには、先ず一人ひとりが自分の健康のことを考えて、正しくかつ適切な医療情報を身につけることが大切であります。また医療関係者も研究者も、一般の消費者に正しくかつ適切な情報を伝える必要があります。健康は個人個人の問題であり、特に病気になってしまった患者さんも「こころ」を持った生身(なまみ)の人間でありますから、「こころ」と身体を含めた全人的医療が施されることによって、予想もしないような結果が得られることがあります。そのような背景のなかで、近年とみに西洋医学と東洋医学とを合体した医学、近代医学と伝統医学を統合した医学が実際に治療に応用されてきています。このような医学を統合医学と呼んでおり、また統合医学は「こころ」と「からだ」を統合する医学であり、予防と治療を統合した医学であります。欧米先進国でもますます盛んになっており、医学教育のなかに取り入れられ、実際に米国などでは医科大学でも講義をするところが増えています。
 統合医学は単なる西洋近代医学に代わる代替医学(欧米ではオルタネイテイブ・メデイシンと言われます)ではなく、文字通り人類の英知を結集した新しい医学であり、また医療でなくてはならないと考えています。統合医学では、個人個人が持っている「生命力」を重視し、如何にして「自然治癒力」を引き出していくかということが、その根底になると考えています。そしてそれをどのように有効に医療に生かしていくことができるかが、これからの実際的医療の課題であります。
 このように今世紀には、これまでの医療の面で忘れがちであった一人ひとりの自然治癒力を高めることによって、一人ひとりが健康で長生きできるようになり、研究者、専門家によって解明されつつある統合医学のような考え方が普及していくと考えます。
 近代医学、薬学、生命科学の進歩によって人類は計り知れない恩恵を受けていますが、専門があまりにも細分化していますが、一方で西洋と東洋、予防と治療、食品と薬局というような境界がなくなりつつあります。特に生活習慣病や難病の根本的に克服のためには、予防、治療という境界を超えた観点に立った医学または医療が追及されています。欧米先進国では、近年代替医療や東洋の伝統医学が注目を浴びるようになっています。そして生活習慣病の予防、難治性疾患に対する代替医療、補完医療の必要性が唱えられており、一方でこれまで未検証であった東洋医学や伝統医学の特徴も、少しづつ解明されてきています。しかし医学ないし、医療の根底にあるものは、個人の本来持っている生命力を高め、如何に有効にその自然治癒力を引き出すかにかかっており、近年は医療の現場で、また医学、生命科学の研究者の間で、そのような事実があることが認識されるようになっています。さらには生活習慣病と関連して、食品の機能性が論じられるようになり、東洋の伝統医学で唱えられてきた「医食同源(または薬食同源)」という考え方が、脚光をあび解明されつつあります。研究者や専門家の並々ならぬ努力によって、21世紀の医学として統合医学は発展しつつありますが、それは単に研究者、医療関係者のみならず、一般の個人にとっても、自分のための、自分による自分の医学であります。