食用きのこ情報
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| きのこと健康 連載12 |
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池川哲郎
日本統合医学研究会 常任理事
NPO統合医療普及協会 理事長
元金沢大学生命科学教室 教授
薬学博士
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延命効果やQOLの改善を発見
きのこ研究が生む新たな効果
景気が悪い、犯罪が増えているなど、この頃良いことがあまりない。日本にとって今夏のような不順な天候です。ATMがそのまま盗まれるという事件があり、日本人が逮捕されています。あのようなATMが盗まれる事件が最初にあったとき、犯人はたぶん外国人だったと思います。ところで4千年以上もの前から動乱を生き抜いてきた中国人のなかには、いろいろな人がいます。盗賊も賢人、偉人もいます。賢人の一人、荘子は、小さい泥棒を防ぐには鞄に鍵をかければよいが、大泥棒は鍵のかかった鞄のまま持っていってしまう。鍵がかかっていれば、かえって泥棒に都合がいいといったという話を思い出したからです(例えば、諸橋轍次著、「乱世に生きる中国人の知恵」講談社)。近いうちに総選挙がある。選挙の投票と食生活は一人一人個人の選択であることをこの際忘れないでおきましょう。
中国文化、日本文化、文化は普遍性を求めて、それが他人に認められるように広がっていく。そして普遍性を獲得した文化は文明と呼ばれるようになりますが、「文明の衝突」が起きれば、戦争にもなります。土地や利権を求めて戦国時代(中国の、日本の)には、武将たちは一所懸命(一つの所に命を懸ける)に国を守るために戦ったことでしょう。近代の戦争もそういう経済的な原因も無視できない。戦後の日本でも企業戦士たちは、国の内外で一所懸命(あるいは一社懸命)に戦って、この国の繁栄を築いてきた。けれども戦後50年を振り返ってみると、日本は経済ナショナリズム以外のアイデンティティを構築することはできなかった。そんなことはきのこと健康には何の関係もないと言われるかもしれません。確かにそうです。しかしちょっと視点をかえて考えると、同じ数式からできていて、基本的な単位図形が無数に重なる図形、いわゆるフラクタル図形が、ときに見えてくるような感じがします。予想される総選挙を考えると、前述したように食生活と選挙の投票は、一人一人の自己責任になりますが、今マニフェストという政党の掲げる目標がマスコミの話題になっています。そしてそれではこれまでの公約というのははたさなくてもよいものであっとのかと思われるほどです。そういうことはわが国の保険健康に関する目標が国で作られた「健康21」でも同じだったのです。たとえば「禁煙」というのは掲げられてはいるのですが、マニフェストがない、あるいは積極的な数値目標がなかったのです。それはなんらかの影響または圧力で消極的な対応で終わってしまったという話もありますが、とにかく禁煙はいつまでにどのくらいという数値目標を掲げたり積極的な対策をとるということは日本では国としてやってこなかったのです。しかし欧米先進諸国では何十年も前から禁煙に力を入れてきたので、現在癌患者が減少してきているのです。癌にならないようにするには食べ物も大切ですが、まず禁煙をすることが癌予防の第一歩です。国全体で見ても、タバコ税で得られる金額はタバコによって癌になった人の医療費の約半分以下(計算の仕方はいろいろありますが)という計算があります。国が禁煙のマニフェストをしなかったために今年、来年の税収は多かったけれども、10年経ってみると、全く赤字だった上に国民は癌に苦しんで死んでいったという結果になってしまったわけです(例えば香川靖雄著、「老化と生活習慣」岩波書店など)。結局、政治家や官僚が学会の意見に真摯に耳を傾けなかった結果、そうなったということが納得できるわけです。だからタバコの税金が必要ならば、タバコ一箱1000円位まで値上げすれば、税金も入るし喫煙も減るという提案が癌学会などでは何度も話題になっています。きのこのことでいえば、学者、研究者から見ればどうも効くか効かないかわからない、または効かない、あるいは効くとは言い難いというきのこのエキスが毎日毎日、新聞やテレビなどで宣伝されて、そういうものが高い値段で売れているという話です。学会や専門家の情報が商業主義に覆い隠されて、必要なところに届かないでいるというのは、前述のタバコの場合と同じということでしょう。
我々が国立がんセンターできのこの抗がん研究を始めた頃に、サルノコシカケなどの硬いきのこが癌に効くという言い伝えがあったことは以前にも書きましたが、さらに日本で食べている食用きのこを調べて見ると、良い結果が出ました。そういうことをよく考えてみると、昔むかしは硬いきのこは採ってきて貯蔵することができるので、少しずつ長い間続けて服用することができたので、何か効き目を見出すことができたのではかと思います。しかしシイタケ、エノキタケ、ブナシメジなど食用きのこは柔らかく古い昔は秋にしか味わうことが出来なかったので、効果を実感することができなかったのでないのでしょうか。そう考えてみると、我々の食用きのこの研究は新しい「言い伝え」を作っているのかもしれないと思っています。
ところで今わが国では長野県が最長寿県であります。かつて沖縄が最長寿県でしたが、どんどん落ちてしまいました。食生活が変わったのでしょう。日本人が米国人と同じように欧米的な食事をしていたときに、糖尿病になる率は日本人が2〜3倍多いということです。だから日本では今糖尿病が急速に増えています。それは欧米人と日本人の遺伝子の違いに関係があったということも一つあります。とにかく日本人は古い古いひもじい時代から、食べ物が少なくてもそれを効率よく有効に使うような遺伝子(倹約遺伝子ということもあります。肥満遺伝子もその一つか)をもっていたので生き延びてきましたが、今日のような飽食時代になるとそれが反対に作用してしまって、欧米人のような脂肪の多い食事をすると肥満や糖尿病になりやすくなってしまうというわけです。なにも長野県人がきのこを食べ、沖縄県人が米国食を食べているからというつもりはありません。少しは関係あるかもしれませんが。さらに長野県は一人当たりの医療費も最も少ないというので、その理由をよく分析してみる必要があると思います。そうすれば保険も破綻しないで済むでしょう。それにはいろいろな見方や見解があります。予防活動が盛んであったり、幾つかの病院(農協関係の病院など)が一次予防、二次予防に積極的に努めている。また老人が畳の上で死にたいということもあるそうですが、それには往診が欠かせない。そういう地域医療や末期医療に対する対策ができているところがあり、また保健婦さんが多いなど医療体制が整っているのではないかということなどであります。長野県の人がよく食べているきのこは、エノキタケ、ブナシメジ、ナメコですが、そのほかシイタケ、マイタケも生理活性のデータがあります。
最後に効果判定のためのヒトの臨床研究に関しては、癌の新薬でも評価判定にいろいろ議論が出るところです。私もNCI(米国国立癌研究所)の研究者と何度かこのことについて議論したことがあります。しかしなかなかむずかしいところがあります。特にサプリメントに関しては、欧米諸国でいろいろ議論はありますが、薬のようにこうすればよいという一定の指針はないのが現状です。
我々もそのような議論の結果を踏まえて、EEMR(エノキタケ、ブナシメジの抽出加工物)について、幾つかの臨床研究を行って、国の内外の学会で発表しております。先ず進行癌や再発癌の患者さんは、一般に共通したカヘキシー(悪液質)という症状に悩まされます。そしてそれがさらに悪い状態を招いて、癌死に至ってしまうのですが、ときにはそういう場合にステロイド剤が用いられます。そこで進行癌の患者さんについて、EEMRを飲む人の群とMPA(メチルアセトオキシプレジェステロン酢酸)を飲む人の群の二群に分ける。このとき両群とも病気の進行状況その他が同じようになるように無作為に分けて、治療成績を比較検討しました。そうすると後者の群(MPA投与群、10例)では、臨床的にレスポンスは全く見られなかったのですが、前者の群(EEMR投与群、11例)ではPR(注2参照)が1例確認されました。従ってレスポンス・レートは9.1%になったのですが、さらに延命効果を観察すると、表1に示したように、はっきりと差が出ました。次に治療を開始してから後のQOL(生活の質)について比較して見ると、EEMR投与群では食欲が増進した人が10人中8人であったけれども、MPA投与群では10人中6人であり、体重の増加でもEEMR投与群の方がMPA投与群よりも優れているという結果を得ました。表2に示しましたように、特にカルノフスキー・スコア(注3参照)の改善状況を観察した結果は、EEMR投与群では11人中8人(72.7%)の人に改善が見られ、悪化した例は見られなかったのですが、MPA投与群では改善例が30%で、悪化した人も3人ありました。その他のデータからもEEMRを飲まれた人の群の方がよい臨床成績が得られたのです。また表3に書いておきましたように、EEMRの投与によって患者さんの免疫機能も亢進していることがわかりました。(参考文献:Biotherapy,15巻、691〜696頁、2001年)。
次にEEMRと癌の化学療法剤との併用療法について、臨床研究を行いました。やはり進行癌の患者さんを化学療法剤単独投与する人の群と化学療法剤とEEMRを併用する人の群と二群に分けて、併用効果を検討しました。その結果併用群では7例中に1例にCRが認められPRは2例でありましたが、制癌剤単独群では2例のPRが観察されただけであったのです。従ってEEMRの併用によって、レスポンス・レートが29%から43%に増加したということになります。紙面の都合上そのほか詳細は別に譲りますが、延命効果、QOLの改善、カルノフスキー・スコアの分析などで、制癌剤にEEMRを併用することによって、よりよい臨床成績が得られることがわかりました(第二回国際統合医療学会、2002、北京などで発表)。
注1 我々が行ったきのこに関する研究成果やきのこと健康について、さらに詳しいことを知りたいときには、ホームページをご覧ください。〈http://www.jaim-net.org/〉
注2 PRは部分寛解、ある治療によって、治療開始前と比較して、およそ半分をめどに癌の病巣の縮小が観察されること。
注3 カルノフスキー・スコアというのは、患者さんの日常生活における状態、特にどういう動作が自分でできるかを尺度として客観的にあらわす指標の一つ。
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