食用きのこ情報
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| きのこと健康 連載3 |
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池川哲郎
日本統合医学研究会 常任理事
NPO統合医療普及協会 理事長
元金沢大学生命科学教室 教授
薬学博士
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きのこの生理活性と機能性3
長野県で癌死亡率調査を実施 −免疫機能を高めるエノキタケ−
前回はきのこ、特に食用きのこの機能性が優れていることがわかってきたことを書きましたが、我々も最初は八百屋やスーパーで売っているきのこはあまりポピュラーなので、何か珍しいものはないかといろいろ検討したこともありました。しかしいわゆる免疫を高めて癌をやっつけるのにはきのこ、特に食用きのこが良さそうだと思うような結果が出てきたのです。しかしそこまでに至るにはかなり長い時間とたくさんのきのこをテストしてみなくてはわからなかったことです。
サルノコシカケなどの硬いきのこから、ごく普通のスーパーで売っている食用きのこに研究の焦点を移して、今まで厚い扉に閉ざされていた壁が急に開いたような実感を持ちました。というのもシイタケ、エノキタケ、シメジ(ヒラタケ)、ナメコなどはサルコマ180の固形癌にはよく効いたし、それらの間には本質的にはそれに差はなかったが、シイタケを取り上げてまずその活性の本体を解明するように努力しました。その過程でもいろいろ困難はあったが、とにかく多糖体もその一つであると確信できるデータが出てきたので、それを分離精製して、発表したのが米国の有名な癌の学術雑誌の論文でした。その表はいろいろなところで紹介されているので、ご存知の方もあるでしょうが、きのこならば、何でもよいという風潮が出てきて、今も健康食品でそういう宣伝がなされていますが、効くきのこと効かないきのこは歴然と差があるのです。あまり効かないきのこも効くように書かれた本や宣伝文をしばしば見ますが、よく調査されないで書いておられるのでしょう。
いろいろ苦労もありましたが、シイタケの宿主仲介性抗癌活性の本体を解明して、グルカンに到達しましたが、それまでのいろいろな経過や問題点については国立がんセンターの研究会で何度か紹介しました。とにかくシイタケの多糖体のグルカンは、β(1−3)−グルカンの基本骨格をもつことがわかり、後にレンチナンと名を付けられて、狭い範囲で注射薬として使われています。しかし最近それを腹腔内注射すると、心臓毒性が出るという研究報告がありましたが、これは特殊な系のネズミを使っており、またサンプルを飲ませているわけではないので、どのくらい一般性をもっているかわかりません。ただ経口投与ではないので、食べ物としてのシイタケの有用性には全く問題ないと思っています。
しかし最近のきのこの健康食品では、何でもかんでもグルカンとうたって効果を宣伝しているのは疑問です。精製した多糖ではある種の免疫効果や抗癌効果は出るでしょうが、その多糖の含有量や経口での効果、また比較実験がないと、サルコーマ180を移植した部位や治療開始時期によって、効果の数字に差が出るわけですから、とにかく生のデータをよく解析してみる必要があります。アガリクス類の多糖体もその含有量は非常に少ないのです。我々も抗癌活性多糖体の含量を測定して発表してきましたが、今年の8月オスロで第7回国際菌類学会があり、そのシンポジウムで宮城県農業短期大学の湊健一郎先生がきのこの中に含まれる抗癌活性多糖体の含量を測定して発表されたのは、そういう点で興味ある発表でした。
きのこの高分子多糖体は注射でないと効かないので、何か経口投与でも効くものはないか、いやきっとあると思って、きのこなどの培養菌糸体を中心にスクリーニングを行って、エノキタケの菌糸体からプロフラミンという糖タンパク質を発見しました。
ところで我々はシイタケに続いてエノキタケを取り上げて研究しましたが、その過程で偶然に長野県の北信総合病院の大熊哲汪先生と一緒に共同研究をするようになりました。北信総合病院では田中茂男先生が凍結外科療法をやっておられたので、凍結外科との併用についての実験モデルをつくって研究しました。ところがエノキタケの抽出物が、凍結外科療法と併用効果があることがわかり、それはいわゆる「凍結免疫」を高めることによって起きることがわかってきました。そしてその免疫を高める活性本体を解明したところ、注射では高分子多糖体も低分子タンパク質多糖体(EA6)も両方効くのですが、経口投与で実験すると、高分子多糖体は効かないで、低分子タンパク質多糖体(EA6)だけが効いたのであります。これは経口投与で同系腫瘍に効くものはないかと探索していた頃であり、しかも別途研究していた活性本体と一致していたので、また一つの新しい研究の扉が開かれたと感じたものでした。
その頃大熊先生から北信州の狭い範囲のエノキタケ生産農家の癌死亡率についての調査を見せてもらいましたが、ある地域では低いが別の地域ではあまり差がないというものでした。これはもっと母集団を大きくすれば決着がつくのではないかと思って、当時長野県農協の副理事長をしておられた堀内巳次氏(後に全農会長になられた)に直接お会いして、長野県全体で調査する研究費用を援助してもらうようにお願いに行きました。事前にあまり打ち合わせしてなかったようですが、すぐに快く引き受けて下さり、感謝したものですが、お願いに行った本人の私は、本当にポジティブな結果が出るかどうか、正直言って内心不安でした。ところが半年経って、大熊先生からよい結果が出たと聞いたときには本当にホッとしました。
この研究結果は、長野県農村工業研究所出版の「きのこ抗腫瘍研究20年」という本に載っておりますが、拙著「きのこ好きほどガンになりにくい」(主婦の友社)に、一部その内容を紹介しました。それについてこのシリーズの第一回のところで述べたキエフとオスロの国際学会で、簡単に紹介したところ、大変大きな関心が寄せられました。そのことが国際的に発表されてこなくて、初めてだったからでしょう。
単純に死亡数や死亡率を比較しても、食べた食品などとの因果関係がわからないので、その年齢に関係ない死亡率を長野県の年齢人口構成を基準として調整したのが、癌年齢調整死亡率で、その比較をしたのが図1です。この図をご覧になってみればわかるように、長野県全体では人口10万人に対して160人の人が癌で死んでいるのに対して、エノキタケ生産農家では97人しか死亡していないという結果で、癌死亡率が63%も低くなっていることがわかります。男女別に見ると、長野県全体と比較した抑制率は男性で37%、女性で43%であり、いずれも長野県全体の数値との間に有意差がありました。エノキタケ生産農家の人が男女を問わず癌で死亡する人が少ないということが出来るのです。
図2は15年間も調査研究した結果を5年毎にわけて統計を取ってみた結果を示しております。長野県全体では癌で死亡している人が増えているのに、エノキタケ生産農家では初めは増えていますが、その後減少傾向にあることがわかります。ここで女性の方がよく多く減少してきていますが、この理由はよくわかりません。また表1をご覧になっていただくとわかりますように、きのこは一度にたくさん食べるよりも、寧ろ毎日続けて食べた方がよいという結果で、継続は力なりということになりましょう。
エノキタケの抽出エキスは免疫機能を高める作用があることは我々と大熊先生らの共同研究で証明されていますが、さらに抗酸化作用があることがわかっています。また胃癌の原因になるピロリ菌をやっつけるという論文もでています。先程述べました田中先生も自分自身が大腸癌になってしまったが、忙しくて手術ができなくて、その間エノキのエキスを飲んでいったら、2カ月経って手術の時の検査では癌が縮小していたということです。それで癌から生還したのですが、5年経ってまた皮膚に癌が出来たのが発見されました。そこでまた多めにきのこのエキスを飲んだところ、その癌もなくなっていったということです。この田中先生の症例はご自身によって英文で学術雑誌に報告されていますし、地元の医師会報にも書いておられます。
このように日本の食用きのこのエキス、これをEEM(Extracts of Edible Mushrooms,「食用きのこの抽出物」の意)と言っていますが、それは外国からきた高価なきのこよりもはるかに優れていることが証明されております。我々もそのような研究結果を国の内外のいろいろな学術雑誌に報告しております。
●癌死亡率の比較
| 長野県全体 |
全体160.1
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男90.8
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女69.3
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| エノキタケ生産農家 |
全体97.1
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男57.5
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女39.7
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**P<0.01
1972年−1986年
年齢訂正基準人口
長野県、全体のエノキタケ生産
農家の対象人口(15年間):174,505人
図1.エノキタケ生産農家の癌死亡率
長野県全体
**エノキタケ生産農家
長野県/男
長野県/女
**エノキタケ生産農家/男
**エノキタケ生産農家/女
年齢調整死亡率(10万人)
1972年〜1976年
1977年〜1981年
1982年〜1986年
P<0.05**:P<0.01
図2.癌死亡率の年次変化(長野県)
表1.エノキタケ摂取による癌死亡率比較 危険度の低下
| エノキタケ摂取頻度 |
摂取人口比率
(b:%)
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比較危険度
(r:年齢性調整)
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癌死亡防御率
(AP:%)
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| 3〜7日/週 |
53.4
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0.47**
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25.1
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| 1〜2日/週 |
33.2
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0.55*
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18.3
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| 3日以下/月(対照) |
13.4
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(1.00)
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計43.4
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* P<0.05 ** P<0.01 AP=b(1‐r)
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