食用きのこ情報
マウスにおけるEEM〔エノキタケおよびブナシメジ抽出物〕の抗腫瘍作用

小濱 秀康、茶山和敏、横山俊夫、池川哲郎

応用薬理/Pharmacometrics 65(3/4)73-77 (2003)

緒言
エノキタケは国内生産量が年間約10万トン、ブナシメジは国内生産量が年間約8万トンで、これらのキノコは日本では最も一般的な食用キノコの品種です。これまでに様々なキノコについても抗癌作用が判明しています。日本産のキノコのうち、エノキタケに抗癌作用があることがマウスを用いた抗腫瘍作用の研究によって明らかにされ、キノコ生産農家の疫学調査により、エノキタケ生産農家の癌死亡率は同地域全体の人に比べて著しく低いことが報告されています。一方ブナシメジについても、その熱水抽出物に優れた制癌作用があることがわかっており、経口投与によって発癌抑制活性を示すことが確認されています。今回、日本人に最も身近なこれら2種の食用キノコの持つ制癌作用に着目して作製されたエノキタケ・ブナシメジ混合熱水抽出物(EEM)の抗癌活性を詳細に検討することを目的として、腫瘍を移植したマウスにEEMを投与してその抗腫瘍活性を調べました。また、カワラタケ由来の抗悪性腫瘍剤としてすでに癌の治療に使用されているクレスチン(Krestin; PSK)の経口投与群も作成し、EEM経口投与群と抗腫瘍活性を比較しました。


実験材料および方法

1. 被験物質
 経口投与によるEEMの抗腫瘍活性の比較対照として、カワラタケ由来の抗悪性腫瘍剤である三共株式会社のクレスチンを用いました。


2. 実験動物および飼育条件
 実験動物として、約30gの マウス(雌10週齢)を用い、各マウスは温度24℃、湿度50%で、照明は14時間明るく、10時間は暗くして(6:00点灯、20:00消灯)飼育しました。 
飼料は市販のマウス・ラット飼育用固形飼料を使用し、水とともに自由摂取させることにしました。


3. 実験腫瘍
 実験腫瘍として、悪性腫瘍サルコーマ180を移植癌として用いました。


4. 投与方法
 我腹腔内投与実験:体重1kgあたり4、20および100mgのEEMを生理食塩水に溶解し、腹腔内に投与しました。対照として生理食塩水投与群を作成しました。
 経口投与実験:EEMは体重1kgあたり250、500、1,000、2,000mgの投与量で経口投与を行い、対照として蒸留水を経口投与する群を作成しました。また同様に、EEMおよびクレスチンを体重1kgあたり500、1,000mgの投与量で経口投与する群も作成して、その抗腫瘍活性を比較しました。



【実験結果】

1. 腫瘍増殖
 EEMの腹腔内投与では、体重1kgあたり4、20、100mgのいずれの投与群においても対照群と比較して、腫瘍サイズの有意な減少がみられました(Fig1)
また、EEMの経口投与群では体重1kgあたり500、1,000、2,000mg投与群で、腫瘍サイズの有意な減少が見られました(Fig2)


2. 体重、腫瘍および各種臓器重量
 腫瘍の重量は体重1kgあたり20、100mgのEEM腹腔内投与によって有意に減少しました
(Fig3)。また、体重1kgあたり100mg腹腔内投与群で体重増加量に有意な減少がみられました。
 EEMの経口投与では、体重1kgあたり500mg投与群で腫瘍重量の有意な減少がみられました
(Fig4)
一方、臓器重量では体重1kgあたり500mg以上のEEM経口投与によって肝臓重量の顕著な減少がみられ、体重1kgあたり1,000mg以上の経口投与によって有意に減少していました。



EEMとPSKの抗腫瘍活性の比較
 
EEMあるいはクレスチンを経口投与した結果、腫瘍重量は体重1kgあたりEEM500mg投与群で最も強い増殖抑制が見られ、対照群と比較して有意に減少しました。体重1kgあたりEEM1,000mg投与群およびクレスチン投与群は対照群と比較して腫瘍重量は減少する傾向はみられたが、有意さはありませんでした(Fig5)



考察
 
今回の研究の結果から、EEMはマウスの悪性腫瘍の一つであるサルコーマ180の増殖に対して腹腔内、経口のいずれの投与でも腫瘍増殖抑制効果を示すことが明らかとなりました。また、EEMは既存のキノコ由来の抗癌剤であるクレスチンよりも優れた抗腫瘍活性を有する可能性があることが示されました。
 エノキタケの抗腫瘍活性を有する成分としてEA6と呼ばれる低分子たん白多糖体が分離され、その抗癌活性が明らかにされています。また、ブナシメジはその抗癌活性の有効成分の一つがβ-(1-3)グルカンであることが分かっており、EEMの強い抗腫瘍作用は両キノコに含有されるこれらの成分の両方がそれぞれ力をあわせることによる効果である可能性が考えられました。
 これまでの研究で、キノコの抗癌作用には免疫機能の活性化が関係しているといわれており、EEMの抗腫瘍作用も免疫機能の活性化によって起きている可能性が考えられることから、現在、EEMの腫瘍に対する作用のメカニズム、特に免疫機能に対するEEMの効果について詳細な研究を行っています。さらに、馮先生(中国)はヒトの進行癌に対するEEMの臨床研究を行い、EEMの投与によって免疫機能の活性化と癌の進行抑制が見られたと報告されています。


(Fig1)


(Fig2)


(Fig3)


(Fig4)


(Fig5)