要旨

 1966年より、国立がんセンター研究所において、担子菌類の抗腫瘍活性についての研究が始まりました。今日では、きのこの研究は世界的に広がり、進展しています。私たちが、研究を始めた当時は、サルノコシカケ科のような硬いきのこは、癌に効くと日本では言われていました。そこで、いわゆる「宿主仲介性」抗腫瘍活性を測定するために、そのような硬いきのこを生理活性試験で試してみましたが、カワラタケやメシマコブを含めそのようなきのこには、必ずしも満足のいく結果は得られませんでした。

 しかしながら、食用きのこ類から得た熱水抽出物は、サルコーマ180という固型癌に対して、癌の増殖を強く阻止する活性があることがわかったのです。制癌多糖体が多く分離されましたが、そのうち、シイタケから分離されたグルカンは、レンチナンと呼ばれ、適応は狭いながらも、日本国内の臨床で使用されてきました。

 もう一つ、良く食べられている食用きのこであるエノキタケにも、高い抗腫瘍作用があります。このエノキタケから、制癌多糖体や低分子蛋白結合多糖体(EA6)が分離されました。EA6は経口投与で抗腫瘍作用があることが確認されましたが、腹腔内投与では余り効果は認められませんでした。EA6は外科手術及び他の抗癌薬との併用による経口投与によって、特に有効であることが証明されています。抗腫瘍スクリーニングテストによって、私たちは、エノキタケの菌糸体から、経口投与によってマウスの同系腫瘍に対して強い活性を示す「プロフラミン」を分離しました。長野県における疫学調査によると、一般の長野県住民より、エノキタケの栽培を主な仕事にしている農家の癌死亡率は、著しく低かったことが実証されました。さらに詳しい疫学調査は現在も行っています。

 また、最もよく食用に供されている食用きのこの一つであるブナシメジの発癌予防効果の研究を行ったところ、腫瘍転移の予防効果や強い抗腫瘍活性があり、さらにブナシメジの乾燥した子実体を5パーセント含む飼料で飼育したマウスと通常の飼料で飼育したマウスを2つのグループに分けて飼育し、その後、全てのマウスに、強い発癌物資であるメチル-コランテレンを皮下注投与して、それらのマウスの発癌状況を調査しました。76週に及ぶ観察の結果、コントロール群では、36匹中21匹のマウスに腫瘍が発生しましたが、ブナシメジ配合飼料のマウス群では、36匹中3匹のみにしか腫瘍が認められませんでした。食用きのこの発癌予防と阻止の作用機序は、免疫賦活と抗酸化作用によるものである。このように、きのこの摂取は癌の予防と増殖阻止に効果があることが証明されました。
古くから東洋に伝わる伝統的医療では、医薬と食べ物は同じ起源である(医食同源または薬食同源)と言われており、きのこでも改めてその意味の重さを感じています。

Figure 1 各種きのこ類の癌に対する増殖阻止率
Figure 2 EA6と外科手術の併用効果
Figure 3 エノキタケ栽培農家の癌死亡率
Figure 4 ブナシメジ摂取マウス血漿の抗酸化活性(AOA)
Figure 5 ブナシメジ摂取マウス血漿の過酸化脂質に対する効果

 

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