近代西洋医学の進歩は素晴らしく、我々もその恩恵を受けているのですが、その反面克服できないような問題がたくさん出てきて、西洋医学的な考えではなく、東洋医学的な考え方も世界的に注目されるようになってきました。アメリカでは1960年代後半から消費者運動の一つというような形で自然療法やハーブ療法が注目されて、サプリメントなどが活用されるようになってきました。
それは従来通りの医療だけでは解決できない問題があるということを意味していて、従来のままの医学では患者の満足いくような医療ができないということになってきたわけです。つまり一つひとつの臓器、一つの局所的な治療だけでは、もはや解決できない問題があるということです。今や身体(からだ)を一つの全体として捉える全体論というか、さらにこころを含めたホリスッテイツクメデイスンというか、そういうことでないと21世紀の病気を克服することが出来ないというように考えられる様になったのです。こういう問題は近代西洋医学の先端をいく側から起きてきたというよりは、消費者の要求として提起されてきたわけです。
例えば1970年代になると、がんと宣告された患者さんが、いつの間にか治癒してしまった人がいるという論文が医学雑誌に多く報告されるようになりました。その頃から近代医療ではないものは代替医療と呼ばれるようになりましたが、その最先端を指導してきたのが、アリゾナ大学のアンドリュー ワイル博士で、近代西洋医学だけでは病気を治すには不十分だと警鐘を発して、統合医療こそが未来の医療になると唱えております。このように統合医療は西洋医学を超えたものを目指しており、名前はどういうものでもよいのですが、ある患者が治癒に向かっていく治療法を探し求める事、そしてその患者にとって最も良い医療を行うにはどうすればよいかなど、近代医学の優れた面とあわせて、総合的に考えていくことが大切だと思います。とにかくわれわれ患者、消費者はこころを持った「生身の人間」であり、その事実をどのように捉えるかによって、治療も治癒も変わってしまいますし、ときには延命も変わってしまいます。ともあれこれからは心を含めた予防医学、予防薬学が重要になってきます。
2.サプリメントの源流は?
戦後結核などの感染症が減少してがんが増えてきて、がんの研究が盛んになり、がんの原因が論じられるようになりました。そしてそれが喫煙や食生活などの生活習慣と関連していることがわかってきて、研究者や医療従事者だけでなく、一般の人々にも注目されるようになりました。現在心臓病、脳疾患、がんなど生活習慣病と言われる病気と食習慣の関係は、近年とみに関心が集まっていますが、がんの予防を研究していく過程で、ビタミンが役立つことがわかってきました。それまでの栄養学ではエネルギーになる栄養という点にのみに注意が注がれ、ビタミンも不足するとある種の病気になるということだけが注目されていたのですが、ある種のビタミンががんを予防する効果があることがわかってきて、ビタミンの効果が再認識されてきたのです。たとえばポーリング博士(ノーベル化学賞、平和賞受賞者)のように、ビタミンCをたくさんとっていれば風邪も引きにくくなるということを言われるようになり、それまでの栄養学では「ビタミンは普通に食べ物からとっていればよい」というところから、「ちょっと余計にとったほうがよい」に変わってきました。こういうことがサプリメントをブームにする源流になったのだと思います。
前述したようにアメリカでは、1960代後半から消費者運動のような現象が起こり、70~80年代と補完代替医療が定着してきました。1992年にはワシントン郊外にあるNIH(米国国立保健研究所)にOAM(代替医療調査室)ができ、98年それが格上げされてNCCAM(国立補完代替医療センター)になり拡充されています。そういうこともあって、アメリカではハーブもサプリメントもブームになり、数多くのハーブが出回ってきて、一般の人々の知識は追いつかない、正しい適切な情報がコマーシャリズムに覆われて消費者に伝わらない、使い方もわからないまま、ただ漫然と広がってしまったという状態になってしまいました。そういうときにハーブで死者が出るという騒ぎが起こり、とうとう社会問題になってしまいました(2003年)。 それは麻黄(マオウ)というハーブが一種の漢方薬で、アドレナリン様作用があることから、ダイエットに使われていた。しかしその生薬は地上部と根っこでは作用が反対で、使い方を誤ると死に至る使い方の面倒な漢方薬であることは古くから中国でも日本でも知られておりました。それは本来無用草という名前でしたが、使い方が面倒な(中国語で麻煩)漢方薬で黄色いことから、麻黄と呼ばれるようになったハーブです。このようにアメリカではハーブのブームにのって市場に出て、しかも肥満というアメリカ人の悩みに付け込んでたくさん摂取するように仕向けられたというわけです。こういうことが起きてから、アメリカのマスコミはハーブにブレーキをかけているというのが現状です。しかし日本でもつい最近、中国から輸入された「天天素」というダイエット製品で死者が出たことはご承知の通りで、注意しなくてはなりません。そういうことを考えても、これからはサプリメントを含めて、正しく且つ適切な情報が一般の消費者に届くようにすることが必要です。
3.アガリスクはがんに効かない!!
正しい且つ適切な情報ということになりますと、きのこの健康食品でもあるのです。私は国立がんセンターで長くきのこの抗がん研究を行ってきましたが、アガリクスというきのこは我々の研究結果では期待されるような効果はありませんでした。
しかしアガリクスは国立がんセンターで試験して、良い結果が出たと本に書いた人が出てきて、その誤った記述が広く宣伝に使われてブームになりました。そこで私は平成10年金沢で行われた第一回日本補完代替医療学会で「我々が行った研究結果では、アガリクスは前述の本に書いてあるようながんに対する有効率は得られていません。」と講演で述べたところ、すごく問題になりました。それでは学会として、次の学会でそれを取り上げることにして、その本の著者に出てもらうように要請しましたが、来てもらえなかったのです。とにかく国立がんセンターでは効いたというデータは一度も出ておりません。さらに平成13年の癌治療学会では中央病院(国立がんセンター)の先生がアガリクスを飲んで肝機能障害を起こし死亡されたという臨床例を報告されています。アガリスクはあまりにもリスクが多すぎます。そういうことから、もしアガリクスが国立がんセンターで効いたという記述があれば、それは全く誤りです。これはわが国でも正しく且つ適切な情報を消費者に届けることが如何に大切かということを示しております。
4.サプリメント カウンセラーとして本質的に学ぶもの
私はきのこの研究から「医食同源」「薬食同源」という東洋の知恵に歴史の重みを感じてきました。それはある食べ物をとると、ある種の病気に効くという昔々からの知恵であります。それはまた人類が野生の時代から伝えられてきた知恵、あるいはサルと分かれる前から人類が持っていた「野生の思考」または「野生(時代)の知恵」であるということができるでしょう。想像もできないような長い人類の歴史の積み重ねの上に、生まれてきたのが「医食同源」でありますが、今から3000年ほど前、中国に周王朝が栄えました。その時代に食医という高官がおり、皇帝の食べる食べ物を選んで管理していたという記録があります。今で言えば食医は栄養士であり、医師であり、薬剤師でもあるような重要な役割をもつ人であったに違いありません。
サプリメント カウンセラーというのは、理想を言えばこのような役割を目指すべきかも知れません。ワイル博士が「医者は心も体もヘルシーでなければ、本当の医師ではない」と言います。統合医療は決して他人の問題ではありません。家族の問題でもあり、自分の問題でもあります。この機会にそういう問題に少しでも役立つような学習をしていただきたいと願っております。
以上